NanoTerasu コアリションビームライン:使い分けの目安

開発課題の解決には、複数ビームラインの連携やシミュレーション技術(MD・FEM等)との統合的な解析が有効です。
特に高分子材料等では、SAXS/WAXSなどの基礎測定から段階的にアプローチすることが最短ルートとなる場合があります。
最適な測定法の選定や高度な解析については、お気軽にコンシェルジュまでご相談ください。

NanoTerasu のコアリションビームラインでは、物質の構造・元素・化学状態・電子状態・内部形状・磁気状態などを、目的に応じて調べることができます。放射光実験に慣れていない方は、まず「試料の何を知りたいか」からビームラインを選ぶと考えやすくなります。

検討例

NanoTerasuのビームライン(BL)選定は、「知りたい情報」と「サンプルの物理的制約」の2つのステップで絞り込むのがスムーズです。

STEP 1:サンプルの物理的制約から絞り込む(フィルター)

まず、測定したいサンプルが以下のどの条件に当てはまるかを確認してください。

項目 軟X線領域 (BL07U, 08U, 14U) テンダー・硬X線領域 (BL08W, 09U, 09W, 10U)
主な対象元素 軽元素 (C, N, O等)、3d遷移金属 中〜重元素、テンダー領域 (S, P, Si, Ca等)
透過性・厚み 透過力が極めて低い。表面(数nm)または極薄膜(100nm程度)が対象。 透過力が高い。バルク(内部)、溶液、厚みのある試験片が対象。
測定環境 基本的に超高真空が必要。 (BL08Uはガス雰囲気可) 大気中、液体、加温・加圧などの環境制御が比較的容易。
ビーム径と分解能 ナノ集光 (100nm以下) による局所解析が強み。 数μm〜数mmの広範囲、または高い空間分解能の3D観察。

STEP 2:得られる情報の階層からBLを選択する

知りたい物理量や現象に合わせて、最適なBLを選択します。
2D:面内分布・顕微分光(マッピング)
3D:立体構造・断層撮影(CT)
Adv.:アドバンスト測定では、多くの場合、装置を導入した学術研究者のサポート/共同研究が必要になります。詳しくはコンシェルジュにご相談ください。

情報の階層 ターゲット 具体的測定手法 / 装置名 該当ビームライン
① 磁性・スピン 磁区構造、磁性デバイス、磁気異方性 STXM / SXM (XMCD) 2D Adv. BL14U
非集光XAS (XMCD) BL14U
RIXS (スピン励起) Adv. BL07U
ARPES (スピン解析) Adv. BL07U
② 電子・化学状態 価数、化学結合、バンド構造、電子相関 ARPES / RIXS Adv. BL07U
Nano-ESCA Adv. BL07U
AP-XPS / オペランドSX-XAFS Adv. BL08U
HAXPES (硬X線光電子分光) BL09U
XAFS / 非集光XAS BL08W / BL14U
③ 元素分布 元素マッピング、濃度分布、不均一性 STXM / SXM 2D Adv. BL14U
XRF (蛍光X線分析) 2D BL08W
吸収端差分CT 3D BL10U
④ 蛋白質3D構造 単結晶構造解析、微小結晶 MX-ES 3D BL09U
⑤ 原子配列・結晶構造 結晶相、格子定数、配向、薄膜構造 粉末XRD / 表面XRD BL08W
⑥ 粒径・凝集・配向 粒径分布、分子配向、凝集、自己組織化、空隙 SAXS / WAXS / GISAXS BL08W
⑦ 3D/4D形態・破壊 3D/4D形状、空孔・き裂、不均一混合、破壊、動的変化 単色放射光CT 3D
タイコグラフィ 3D Adv.
BL10U
白色放射光CT 3D
白色放射光CT 4D Adv.
BL09W

CTの使い分け

非破壊での内部構造観察は BL09W または BL10U が候補です。BL09Wは白色X線CTによる高速撮影(1回15分、1シフト20サンプル程度)が可能で、BL10Uは単色X線CTによる高分解能・位相イメージングに向いています。

生物試料のCT観察におけるX線被曝量のコントロールについて

東北大学 宮下 脩平 先生による、生体試料へのダメージを抑えた撮影手法の解説資料と動画です。

SAXSデータの解釈の基本

SAXS(小角X線散乱)で得られる代表的なケースについて、散乱パターンのプロファイルシミュレーションを行い、そこから読み取れる構造情報(粒径、凝集など)の基本を解説した構造図鑑です。
はじめてSAXSの利用を検討されている皆様の参考になれば幸いです。

ビームライン一覧へ戻る