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BL14U INFORMATION

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主な測定法

  • 軟X線吸収分光 (XAS)
  • 軟X線磁気円二色性分光 (XMCD)
  • 軟X線イメージングSXM, STXM (アドバンスト測定)

概要

BL14Uは200~1400 eVの軟X線を利用するビームラインです。ツインヘリカルアンジュレータによって、 左右円偏光を1分以下の短時間で切り替えることが可能です。分光器としては、円筒ミラーと 不等間隔刻線平面回折格子を組み合わせた定偏角型を採用しており、フレネルゾーンプレート光学系に よってΦ100 nm以下に集光されたナノビームを利用できます。

実験装置として、軟X線磁気円二色性(XMCD)の測定機能を備えた軟X線イメージング(SXM)装置が 配置されています。軟X線イメージングの計測方法としては透過法と全電子収量法に対応しています。 金属薄膜の成膜やイオンミリングによる表面清浄化などの前処理も可能です。このSXMを用いることで、 様々な物質の元素や化学状態の分布をサブミクロンスケールで可視化することが可能です。 さらにXMCD測定を組み合わせることで、きわめて高感度に物質の磁気特性を調べることができるようになります。

ビーム特性

エネルギー
◆非集光のビームの場合 : 200~1400 eV
◆集光のビームの場合 : 400~1200 eV の利用に適しています。

※400 eV以下でも測定できる場合がありますが、特に、炭素K吸収端近傍では 光学素子の汚染等の理由により、入射軟X線強度が顕著に低下します。
※300eV以下でも測定を試行することは可能ですが、軟X線強度に関する以上の状況を予め御了承の上でご利用ください。
フラックス
非集光のビーム条件の場合 : > 3 x 1012 photons/s
集光のビーム条件の場合 : > 3 x 109 photons/s
(いずれも計算値であり、エネルギーや実験条件に依存します)
ビームサイズ
非集光のビーム条件の場合 : Φ数100 μm(スリット開口条件に依存します)
集光のビーム条件の場合 : Φ100 nm以下

光源と光学系

33極・周期長56 mmの磁石列をタンデム配置させたツインヘリカルアンジュレータを光源とし、 回折格子分光器で単色化した軟X線ビームが利用可能です。
分光器の上流と下流にそれぞれスリットがあり、エネルギー分解能の調整や、走査型イメージングに おける仮想光源として利用できます。

実験ステーション

測定法 
透過法・全電子収量法
試料サイズ
最大10 mm x 10 mm(厚みは数mm)
試料について
透過法
・軟X線を透過できる程度の薄片試料
(おおよそ1 µm以下。詳細はスタッフにお問い合わせください)

全電子収量法
・観察対象が表面から5 nm以内に存在する導電性固体
・試料に導電性が無い場合は試料表面に数Åの金属薄膜を蒸着することでデータ取得が可能
・いずれの測定法でも試料温度は室温
磁場環境
光軸と平行に最大8 T

レイアウト


BL14Uを利用した磁気イメージング測定例

【永久磁石のイメージング】


軟X線 Fe吸収コントラスト像
試料: 市販ネオジム磁石
処理: 熱消磁
測定時間: ~5 min.
X線エネルギー: 708eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm

XMCDコントラスト(磁区像)
試料: 市販ネオジム磁石
処理: 熱消磁
測定時間: ~12 min.
X線エネルギー: 708eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm
サンプルキャリアの様子
細く切って試料キャリアに搭載し、真空中で破断
(左: 破断前 右: 破断後)

【隕石のイメージング】


XMCDコントラスト(磁区像)
試料: ギベオン隕石
測定時間: 10 min.
X線エネルギー: 708eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm
サンプルキャリアの様子
表面研磨後に試料キャリアに搭載

【透過イメージング】


試料: キチョウの鱗粉
測定時間: 25 min.(5 min.×5)
X線エネルギー:708 eV 
鱗粉を採取したキチョウの写真
鱗粉の光学顕微鏡像
サンプルキャリアの様子


【元素選択イメージング】

元素マップは、各元素固有のX線吸収端エネルギーと、
その直前のエネルギーでそれぞれイメージを取得し、
これらの差分によって得ることができます。

試料: 硬貨
測定時間: ~12 min.
X線エネルギー:931 eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm 
硬貨の参考資料はこちら

元素マップ(Cu)
試料: 硬貨
測定時間: ~12 min.
X線吸収端エネルギー:931 eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm 

元素マップ(Fe)
試料: 硬貨
測定時間: ~12 min.
X線吸収端エネルギー:708 eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm 

【生体サンプルの軟X線イメージング】

  試料: マウス精子
X線エネルギー:1028 eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm 
試料: 大腸菌
X線吸収端エネルギー:708 eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm 
試料: 培養細胞
X線吸収端エネルギー:708 eV
観察範囲: 60 μm × 60 μm 

精子サンプルの実体顕微鏡イメージ
精子サンプルの実体顕微鏡イメージ
・化学固定した生体試料をSiNメンブレン上に
滴下(5 μL程度)し、風乾。
・SiNメンブレンは3 mm角、100 nm厚を使用
・サンプル滴下による窓の破損を防ぐため、
メンブレンの角付近に滴下した。
・可視光顕微鏡でサンプル状態を観察し、
測定候補領域の座標設定(参考画像)。
・サンプルキャリアにSiNメンブレンをマウントして、
装置に導入

【珪藻化石のイメージング】

試料情報
試料 : 珪藻化石 Stephanodiscus sp.(推定)
産地 : 岡山県真庭市蒜山
時代 : 第四紀 更新世(約50万年前)

試料準備
① 水洗後、比重選鉱で上澄みを採取
② 無水エタノールで洗浄
③ SiNメンブレン上に滴下
④ 風乾後真空引き


珪藻化石の全体像
上と右の珪藻は一つの珪藻が上半殻と
下半殻に分離したものと推定される
試料: 珪藻化石

珪藻化石の中央部の胞紋
試料: 珪藻化石

珪藻化石の外縁部の胞紋
試料: 珪藻化石

BL14Uを利用したスペクトル測定例

【MCDスペクトル】


試料: 市販ネオジム磁石
測定時間: 約40分
(偏光切り替え+磁場反転 4本1セット)
X線エネルギー:約690 eV~770 eVの範囲