理事長挨拶
巨大顕微鏡から物質の「真実のデータ」を生み出す工場へ
~ナノテラス・コアリションは、研究開発を「コスト」から「投資」へと変革します~
一般財団法人光科学イノベーションセンター(PhoSIC)のWebサイトをご訪問いただき、誠にありがとうございます。
東日本大震災の「創造的復興」の旗印として誕生した3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」は、2024年4月に本格稼働を迎え、現在、世界最高水準の光源の安定度で産業界をお迎えしています。私たちが目指したのは、単なる大型加速器の整備にとどまらず、産・官・学・金が対等に結集する「新しい研究開発の制度OS(仕組み)」の創出です。
私たちが共有する根本理念は、「ここでの活動に投じられる資金は、利用者の『コスト(経費)』ではなく、未来への『投資』である」ということです。
加入金は、巨額の自前設備投資を排し、ROIC(投下資本利益率)の向上を図る、いわば「研究開発基盤への戦略投資」であり、日々の利用料は、開発期間の短縮や知財獲得につなげるための「研究開発投資」です。
安全審査を除き事前の課題審査は不要、最短で利用日の2日前まで予約可能、成果は100%専有できる仕組みにより、企業のビジネススピードに応えます。
運用の本質も進化しました。人間が覗き込む「巨大顕微鏡」を脱し、AI時代の新材料開発で、ハルシネーション(もっともらしい誤り)を抑えて現実につなぎ止める一次実測データを生み出し、スパコンとの直結で、試作の激減を目指す物質の「真実のデータ工場」へと昇華させました。
PhoSICは、コアリションメンバーの皆様から託された投資を、事業成果と知財の創出へつなげる、いわば「受託者責任」を担います。加速器の安定運転を担うQST(量子科学技術研究開発機構)、共用利用を支えるJASRI(高輝度光科学研究センター)、そして大学とスクラムを組み、課題抽出からデータ解析、事業化まで、私たちが責任を持って現場に伴走いたします。
【メンバーの皆様と共に挑む課題:セキュリティゾーンの早期実現へ】
海外の航空宇宙企業の幹部が視察時に強い関心を示されたように、先端半導体や航空宇宙などの機微領域において、他の利用者の視線を遮断し、「研究開発の意図」を守り抜く「ハイセキュリティゾーン」の設置は、日本の国際競争力を左右する不可欠な要素です。
本構想は現在検討段階にありますが、日本の産業技術力を守るために後回しにはできません。コアリションの皆様と一体となり、必須インフラとして行政へ強く要望し、官民協調での早期実現を目指してまいります。
【自前主義を超える「知のグリッド」構想】
さらに私たちが描いているのが、仙台のNanoTerasuを核に、熊本における半導体の量産現場の課題を物質の真実のデータで迅速に解明し、東京の資本・知財網が世界へ展開する「知のグリッド」構想です。
これもまだ構想段階ではありますが、一地域や個社の自前主義を脱し、日本列島全体で国家的な戦略インフラをシェアして連動させるこの青写真は、大企業のみならず、地場中小企業にとっても、自らのビジネスを跳躍させる大きな武器となります。
「コストを削る研究開発」から、「未来を拓く投資」へ。
世界のディープテック総力戦を共に勝ち抜くパートナーとして、一人でも多くの皆様が、この有志連合(コアリション)に合流してくださることを、心よりお待ち申し上げております。
理事長 高田 昌樹
(国立大学法人 東北大学 副理事/教授)